食欲不振
食欲不振
食欲不振とは、“食べ物を食べたい気持ちが起こらない状態”や“食べたいのにあまり量が食べられない状態”などを指します。
「気にはなる症状ではあるけど、特に日常生活に支障はない」ということでそのまま過ごされる方もおられるかもしれませんが、食欲不振は病気のサインのこともあり、そのままにしておいて病気が進行してしまった、などということにもなりかねません。
私たちが生命活動をするためには栄養を取ることは必要なことであり、そのための食事がとれなくなっているということは、思っている以上に“普通ではない状態”なのです。
特に下記のような症状を伴う方は病気による食欲不振の可能性があり、一度当院を受診することをお勧めします。
・長期間(2週間以上)続く食欲不振
・体重減少を伴う食欲不振
・食べ物を食べても味がしない
・60歳以上の方
・胃痛・腹痛・嘔吐・黄疸などの他の症状を伴っている食欲不振
食欲不振の原因は大きく分けて4つあります。
心因性とは、ストレスやうつ状態による食欲不振です。
もともと“食欲”は脳の視床下部という部位がコントロールしているのですが、ストレスが続いたりやうつ状態になると視床下部の働きが乱れ“食欲”という信号自体が発生しなくなってしまい食事が食べたくないという状態になってしまいます。
さらにうつ状態が進行すると、食べても味がしない・砂のような感じがするといった味覚の低下まで起こってきてしまいます。
機能性の食欲不振とは胃や腸の動きや消化・吸収力の低下などによって起こるものです。最近では機能性ディスペプシアとも呼ばれています。
胃や腸などの消化器の機能は自律神経が調整していますが、疲れやストレスなどが続くと自律神経の働きが低下してしまい胃や腸がうまく動かなくなってしまいます。
また夏場に夏バテや熱中症気味になり脱水傾向になると、消化器系にうまく血液が循環せず動きが低下することもあります。
そうすると「胃が動かないので食欲自体もわかない」、「食事をとってもすぐにお腹が張ってしまい量が食べれない」、という状況になってしまいます。
心因性や機能性は、ストレスや疲れ・暑さなどによる周囲の環境が影響しておこる食欲不振ですが、器質性・症候性は何らかの病気による食欲不振です。
代表的な疾患には以下のようなものがあります。
がんがつくり出すサイトカインという物質によって代謝の異常や電解質の異常が起こり、エネルギー消費量が増加し、胃や腸など内臓機能を働かせるためのエネルギーが確保できなくなります。それより胃の機能低下が起こり食欲不振や体重減少などが生じます。
また、胃がんや膵臓がんなどの消化吸収に関わる臓器のがんは消化機能にも影響するため、食欲不振が起こりやすくなります。
特にがんの発生率が増加してくる60歳以上の方で体重減少を伴う食欲不振は要注意と言えます。
ピロリ菌に感染すると萎縮性胃炎という慢性胃炎が起こります。長年経過することで胃の蠕動機能や消化機能が低下し食欲不振の一因にもなってきます。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍ができると、胃に食べ物が残っている感覚がするため、満腹感によって、食欲不振が起こるとされています。痛みを伴うことが多く、放っておくと穿孔(胃や腸に穴があくこと)することもあるため、痛みを伴う食欲不振は早めに病院を受診することが大切です。
血液中のナトリウムなどの電解質が異常をきたすと食欲不振を来すことがあります。腎機能異常や熱中症などで起こってきます。
薬剤性の食欲不振は、痛み止めの薬や抗生剤、向精神病薬や抗がん剤などの副作用で起こることがあります。
食欲不振の発症時期・程度・体重減少などの付随症状や生活環境、飲んでいる薬の状況を伺います。
問診で原因の予想がつくことも多く、しっかりとお話を伺い患者さん自身の生活背景を知ることも大事になってきます。
甲状腺などの代謝異常や電解質の状態を確認します。
消化器系のがん(肝臓がん・膵臓がん・胆のうがん)などの病気の検索を行います。
また、大きな病変であれば胃がん・大腸がん、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの胃や腸の病変もエコーでわかることが多いです。
その他、精密な検査が必要であると判断した場合は連携している医療機関にご紹介いたします。
食欲不振の治療法は原因によって異なります。
心因性食欲不振の治療については原因となっているストレス環境の改善が大事ですが、仕事や家庭のストレスなどはすぐには改善するのが難しく、内服薬を使用して食欲不振の治療を行います。
ただし、うつ傾向などが強い場合には心療内科の先生と連携をとりながら改善を目指します。
機能性の食欲不振に対しては、低下した消化機能を補う薬(胃腸の動きを活発にする薬、消化剤、漢方など)を用いながら治療を行います。
治療を行いながら、消化機能を改善していくための生活習慣作りを行い食欲不振の根本治療も進めていきます。
病気による場合は原因となっている疾患(がん・甲状腺疾患など)を治療することで症状は改善してきます。
薬剤性の場合は通常は飲んでいる薬を中止したり変更すれば改善することがほとんどです。
ただ、抗がん剤のように簡単に中止できず薬の継続が望ましい場合には、胃薬や漢方薬などを併用しながら食欲不振を改善します。
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